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医師のキャリアをとりまく環境・未来
多摩大学医療リスクマネジメントセンター教授:真野 俊樹先生によるコラム 。
毎月 1日更新

医師と医療経済

真野先生

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医師のキャリアをとりまく環境・未来

真野医師

真野 俊樹

1987年名古屋大学医学部卒業。医師、医学博士、経済学博士、日本内科学会専門医、MBA。臨床医を経て、95年9月コーネル大学医学部研究員。外資系製薬企業、国内製薬企業のマネジメントに携わる。その後、昭和大学医学部(病院管理学担当)専任講師を経て、現在、多摩大学医療リスクマネジメントセンター教授。

医師と医療経済 第3回

医療経済を志したわけ

わたしが、米国で医療経済を勉強してみようと思った理由はいくつかありました。もっとも大きな二つのうちのひとつは、米国で行われている医療の仕組みが日本とまったく違ったことに驚いたことです。これは、前回にのべたマネジドケアの話です。そして、その当時米国の医師は、冗談半分であったかもしれませんが、日本の医療は遅れているから、今に日本も同じようになると、語ってくれました。ちなみに、10年たった今でも同じようにはなっていません。

もうひとつは、個人的な問題です。10年以上前のことですから、時効になっていると思いますので、あえて書きますが、研究に見込みがなくなった、ことです。筆者は日本で研究論文を英語で10本くらい書いていました(その段階では投稿中等も含みますが)ので、米国でもそれなりにやれると思っていたのですが、甘かったのです。米国では、われわれはどちらかというと技師的な扱いをされていましたので、2年間で1本の論文が書けるかどうかといった感じでした。もちろんこれは、留学した研究室のアクテビティのもよるでしょうが、個人の能力不足、もっと言えば自分に研究者としてふさわしい能力があるのか、といった自分の人生への本質的な問いかけも含んだものでした。

1年くらい実験も続けながら、そのあたりを考えた末、方針は決めました。すなあち、医療経済や経営などを勉強してみようということです。そこで、悩んだのが医局との関係です。

米国では医局制度はありません。ドイツから来た制度です。ご存知の方も多くおみえと思いますが、すこし振り返ってみましょう。

ドイツ医学からの伝統

医局のはじまりはドイツ医学をとりいれた大学の講座制にはじまることは良く知られています。医学が、明治時代に教授の権限の強いドイツ講座制の制度をとった理由には、その時の日本の国情にドイツのシステムが一番合うということを評価したからといわれます。イギリス,アメリカ,フランスにも視察団を派遣したうえで、ドイツのシステムを採用する、ということを決定したのです。これが明治2年のことです。ドイツの制度は教授の権限が強い縦の講座制で、しかも「学位制度(ハビリタシオン)」があります。そしてこのときにこれを採用しているのです。これが現在の医局講座性の始まりなのです。

しかし、日本のように現在のようにほとんどの医師が何ら法的や強制的な裏づけがないのに医局に集まっている状態については、むしろ自然発生的に起こったものと考えたほうがいいかもしれない。そこには何らかの理由があるはずであろう。そうでなければ途中で違った形になっていくはずで、何か現在の形をとった必然性があるはずです。医局の役割には、教育・研究・診療・人事といったさまざまはものがあるわけです。医局の発生は勉強をするためのクラブ的なものと考えたほうがいいかもしれません。

なお、講座制の大本であるドイツではすでに医局講座制を廃止したといいます。

文科系の教育とは

教育の視点で、ほかの学部、特に大きな違いがある文科系の大学の教育を考えて見ましょう。

医学部に限らず大学には学部の下に学科というのがあってその下に講座というのがあります。これは同じです。例えば名古屋大学医学部医学科内科学講座とか東京大学医学部保健学科医学統計講座(講座名は実在しません)といったようになっています。この講座の中に教授がいますが、普通ひとつの講座に1人教授がいます。でも私立大学の医学部では、講座の主任教授が1人でその他何人も教授がいる場合があります。この講座の大きさによって大講座制と小講座制があります。文科系の大学は小講座で講座の中には教授1人だったりするかわりに教授の数が多いのです。医学部や理科系の学部は1人では研究ができないので何人かが講座を構成していることが多いです。つまり助教授や講師や助手です。なお、大学の中には講師というポストは正式にはないようです。

考え方としては、医学部も実際に内科とか外科といった内容の教育を学生にも、卒業生にも施し、かつ研究をするためにはある程度の人数がいないとまわっていかない、ということです。これは米国の医学部でも同じで、わたしが留学していたコーネル大学の医学部薬理学でも主任教授は1名ですが、いわゆる教授は数名いましたし、その中の何名かはいわゆる任期制の教授でした。

任期制の教授

実は米国では、テニアと呼ばれる終身制の教授と任期制の教授がいます。逆に、終身制になると、米国では定年という概念がありませんので、本当に終身になってしまいます。ただ、米国は日本と、仕事(労働)に対する価値観がちがいますので、働けなくなった、余生をのんびり送りたい、研究費が取れなくなった、といった理由でリタイアされます。最近では、日本でも任期制の教授が生まれてきています。

次回には、もう少しこの医局について考えた上で、わたくしの話も続けたいと思います。

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