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医師のキャリアをとりまく環境・未来
真野 俊樹1987年名古屋大学医学部卒業。医師、医学博士、経済学博士、日本内科学会専門医、MBA。臨床医を経て、95年9月コーネル大学医学部研究員。外資系製薬企業、国内製薬企業のマネジメントに携わる。その後、昭和大学医学部(病院管理学担当)専任講師を経て、現在、多摩大学医療リスクマネジメントセンター教授。 医師と医療経済 第12回医師不足を考える前回、すこし経済学とは離れた視点で医師も含めてではあるが、給与というものを考えてみました。そこで今回は、医師の数というものを考えてみましょう。 厚生労働省は1984年に「将来の医師需給に関する検討委員会」を発足させ、1986年に委員会意見として、2025年には10%もの供給過剰が見込まれるため、1995年をめどに医師の新規参入を10%程度削減する必要があると報告しました。また、1993年には「医師需給の見直し等に関する検討委員会」を発足させ、1996年にほぼ同じ趣旨の報告を行っていいます。もっとも新しい1998年の提案では、2020年までに医師の新規参入を10%程度削減する必要があると報告しました。それによって、日本の医師数はほかの先進国にくらべて医師数の増加速度がおちました。 すなわち、医師数は少なくとも総数では足りているはずでした。 医師不足の原因の一つは、平成15年に北海道内の大学に在籍する一部の医師が、勤務実態がないのに名義だけを医療機関に貸し、その対価として報酬を受け取っていたことが発覚したことでそれによる規制が厳しくなった点です。従来こういった状態は標欠といい暗黙に了解されていました。しかし、この事件がきっかけになって全国的に名義貸しを取り止める措置が講じられたため、医師不足の実態が顕在化することになったのです。 そして第二の原因は、これまで医師免許取得後の2年間の臨床研修は任意であったものが平成16年4月から必修となったため、大学病院に比べ処遇の良い都市部の病院に研修医が流れる機会が増えた点です。大学病院における研修医数 は平成13年の約71%から平成18年には約45%になってしまいました。1桁の数の研修医しか残っていない大学病院もあるのです。これによって大学病院での医師不足がおき、逆に大学病院の医師を病院へ派遣できなくなり、場合によっては医師を引き上げる事態が起きました。 さらに、最近問題になっているのは、医師の開業による病院勤務医の不足です。そして、開業してしまう医師が増えれば取り残された(?)医師の仕事の量が増します。たとえば、各病院に小児科・産科医が1人ずつ配置されるなどの薄く広い配置されたりします。また、病院(勤務医)への夜間・休日患者の集中もみられています。 女性医師の増加も、女性の場合にはお産や家庭に入ったりする場合がありますので、どうしても頭数として少なくなる場合があります。新規参入医師のうち、産婦人科では約72%が女性、小児科でも約45%が女性といわれています。 最後に、感謝されなくなったことがあります。それどころか、逆に特に産科におけるリスクの高まりや訴訟の増加に対する懸念もでてきました。また、医療が専門分化していったためもあります。ここでは、経済学に関連する専門分化について考えてみましょう。 専門性と分業専門化が進んだ点から医師不足を説明する理由はふたつあります。ひとつは、専門家が専門家として位置づけられたので、お互いが協力しにくくなったこと、もうひとつはあたらたな需要が作り出されたことがあげられます。専門化がすすみ、場合によっては脳梗塞の患者を扱ったことがない、という内科の医師があらわれたとしましょう。当然、その内科医はその患者を診ないので、神経内科医あるいは脳神経外科医に負担がかかることになります。 患者の側にも問題(といっていいかわからないが)もありえます。たとえば小児科医の必要性がいわれるが、小児科医でなければ診断・治療できない病気はさほど多くは無いと思われます。しかし、患者さんは小児科を求める。かくして小児科医はいつも忙しくなる。というわけです。 さらに、専門性が強くなりその分野についての研究が進めば、あらたな知見が生まれます。場合によっては、これが新たな需要を生み出す可能性があるでしょう。昨日まで行い得なかった治療法ができたので、医師の仕事が増えるということも当然ありえるのです。 診療科目の偏在専門性と関連しますが、それに比べると、診療科目ごとの偏在はすでに示されているし、医師同士の助け合いである程度改善できる問題です。それは上述したように、医師であれば、仮に小児科医ではなくても一般の患者さんより、診断治療が適切であると考えられるからです。 しかしここに問題があります。何かあったときの責任問題です。患者さんは最善をもとめるので、「自分がやったよりはよかった」というのでは納得しないのです。特に、小児やお産ということであればその傾向は強くなります。 地域の偏在地域の偏在も同じく深刻な問題です。これに上述した診療科目の偏在が加わったのが、産婦人科医が1名もいない、といった問題になるのです。 また、これを解決するには最低2名を確保する必要があると思われます。医師の仕事は想像以上にストレスが多い、特にいつ呼ばれるかわからない、という状況を続けるのは、仮に何も無かったとしてもかなりつらいものです。ここを理解しないと、いくら多くの給与をだしても医師はあつまらないことになるでしょう。さらにいえば、看護師などのサポートスタッフの充実も欠かせません。 医師がなぜ地方に行かないか、なぜ開業してしまうのか、こういったことは、確かに医師は聖職かもしれないが、さはさりながらあまりに過酷な状況では長続きしない、という一面の真理にも目を向させます。しかし、一方では、状況がいいからということで開業すればどこかでその反動が来るかもしれません。米国のように、開業医さんが病院でも診療をして、いつでも病院勤務もできるようにしておくことが必要な対策かもしれないと思います。 |
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