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医師のキャリアをとりまく環境・未来
多摩大学医療リスクマネジメントセンター教授:真野 俊樹先生によるコラム 。
毎月 1日更新

医師と医療経済

真野先生

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医師のキャリアをとりまく環境・未来

真野医師

真野 俊樹

1987年名古屋大学医学部卒業。医師、医学博士、経済学博士、日本内科学会専門医、MBA。臨床医を経て、95年9月コーネル大学医学部研究員。外資系製薬企業、国内製薬企業のマネジメントに携わる。その後、昭和大学医学部(病院管理学担当)専任講師を経て、現在、多摩大学医療リスクマネジメントセンター教授。

医師と医療経済 第23回
価格の難しさ(2)

価格のシグナル

前回から、給与や労働の対価としての価格について考えています。学歴は、正しいかどうかは別にして、就職のときに大きな意味を持つ(シグナリング理論)ということがわかりました。
  では価格はどうでしょうか。
  ここで価格の決まり方を考えてみなければなりません。すなわち、価格がそのものなりサービスなり場合によっては人の価値を正確に反映していれば、価格によって意思決定をすることは正しい、ことになります。しかし、そうなければ、前回見たシグナル理論のように確率的なものにとどまります。もちろん確率的だからといって、その考え方の価値が減じられるわけではありません。ただ、重要な意思決定、たとえば医療で命をかけるとか、家を買うとかいった場合には、そのシグナルだけでは少し不安になるのもまた事実でしょう。
  ダイヤモンド社の最近のベストセラーのビジネス書に、「スタバではグランデを買え」というものがあります。私は書籍は購入しましたが、実はまだちゃんとは読んでいません。ただ、題名と前書きから想像するに、スタバではグランデという大きなサイズのものを買ったほうが得、という話だと思います(ほぼ題名のとおりです、すみません)。得ということは何かというと、価格に対する価値が違っていて、グランデのほうが1ccあたりの値段が安いという話だと思います。
  価格をシグナルにしていたらどうでしょうか。この場合には、高いほうが価値があるので、話としての整合性はありますが、逆の場合もありえるでしょう。すなわち、こういった書籍が発売されてベストセラーになるということ自体が、価格が価値を正確に代弁していない(代理変数になっていない)ことを示しているのです。
  別の例を考えてみましょう。

お札の価値

正月には初詣に行く人が多いでしょう。私も行ってきました。そこで、家内がお札を購入するわけです。お札は1,500円でした。
  よく考えてみると、この1,500円という値段は何なのでしょうか。この札が、無病息災の札だとして、1,500円で本当に無病息災が買えるのであれば、このお札を購入することは、とてもおいしい話になります。こんなにありがたいことはないでしょう。
  しかし、それは常識的にはありえません。逆に本当に無病息災が買えるのであれば1億円でも安いでしょう。
  そうすると、この1,500円というのは何でしょうか。
  想像するに、ただではありがたみがない、このくらいの値段なら気軽に支払えるであろう、という消費者側の心理を勘案してつけられた価格ではないでしょうか。
  もしこれが1万円であれば、ご利益がないことへ文句をつける人がいるかもしれませんし、買いたい人が減るかもしれません。
  しかし、この考え方はそもそも商業主義でけしからん、という批判もありえます。
  勝手なことを書いていますが、そういったことを考えると、お札は値段を決めないほうがいいのかもしれません。実際には有名無実化していますが、米国の美術館などは、入場料は寄付に近い感覚で、正式な価格ではありません。こういった形にしたほうが、合理的な気がするのは私だけでしょうか。

給与の決まり方

ということで、最初の話の労働の価格としての給与ですが、すくなくとも給与が高いから優れた人間だとか、いい人間だということにはとてもなりそうにありません。
  去年の新聞では、投資銀行業務(企業のM&A、IPO、再生などを行う業務)を行うある会社では世界に約2万6,000人いる社員1人当たりの平均ボーナスは、62万ドル(約7,250万円といいます。最高経営責任者(CEO)クラスで2,500万ドル(約29億2,500万円)、管理職クラスで1,000万ドル(約11億7,000万円)〜2,000万ドル(約23億4,000万円)となるようです。
  資本が利潤や剰余価値を生む社会システムのことを資本主義といいます。社会に貨幣を投下し、投下された貨幣がより大きな貨幣となって回収される場合この貨幣が資本とよばれるのです。したがって、この大きな貨幣の動きの1部を収入としてもらうという仕事においては、とてつもない報酬が得られるのです。
  そんなわけで、貧しい状況は困りますが、あまり金銭を求めても・・・ということで、われわれ医療関係者もあまりこの給与の多寡については考えすぎないほうがいいのかもしれません。

経済学を学ぶ効用

今回のこの2回のエッセイは、この年末年始に神社参りをしたときに思いついた内容です。皆様の参考になったかどうかわかりませんが、経済学を知っておくことは、このような考察をするときのよすがになることは確かです。
  すこし、宣伝ですが、今回、医学書院からこのような経済学の発想で医療を考えてみる「      」という書籍を発売しました。入門医療経済学(中公新書)がすこし、文系よりであったことの反省をして生まれた書籍です。機会があればよろしくお願いします。  

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